Atelier Sagan
ご案内 スケジュール イベント トピック エッセイ リンク 各クラスが独自に運営するページです。 サイトマップ トップ
展覧会 スケッチ会 特別講座 パーティー
2001A's展
2001アズ展/座談会 2


「スケッチっていうのは、「即興」っていうよりは、素朴なものを掴むっていう感じはある。」齋藤
■ 現場が大切

サカイ:こないだね、ドイツに行っている恩師から葉書が来たの。「お前の絵に似たような絵があった」と、その絵葉書を送ってくれたんだ。ちょっと愕然としたのよ。似てるんだよ。似てるんだけど、僕に無いものがあったんだ。それにはね、「水蒸気」が入っていた。植物らしきものがわーっと生えていて、そこに沸きあがる水蒸気らしきものが出てるの。僕がアトリエの中で描いているときに、水蒸気なんて全く頭になかった。これは、現場に行って、ちゃんと感じることをしなければならないと。これがリアリティか!ちょっとショックを受けた。

斎藤:スケッチっていうのは、「即興」っていうよりは、素朴なものを掴むっていう感じはある。密室のアトリエで描くっていうのはね、構成なりなんなり、ひとつ違うことを構えている。一方が足りなくなったとき、もう一方を求めるとだとは思うんだ。

サカイ:現場で描いていると、余計なものは省略して、自分の執着しているものを短時間で描くから・・・

斎藤:まさに、本能だね。

柴村:っていうか、あんまり考えてないんだよ。

野村:よくとも悪くとも、反応するってことが先になるよね。そういう即興的に感じ取ってるものを、もう一度アトリエに持ち込んで、しみじみ描き直すっていうのもあんまり良くないことなのかしらね。

斎藤:ある。その場にいる責任っていうのがあるからね。

野村:アトリエに帰って仕上げます、っていう言い方があるじゃない。あれってどうなんだろう、っていつもふと疑問に思うのね。それはそれでおいておいてはいかが?って思うんだけど、やっぱりできてないって本人は思うじゃない。それはどうしたらいいの?

斎藤:まぁ一番いいのは、自分の部屋に1年ぐらい飾っておいたらいいんじゃない?すぐにはわかんないよね。スケッチしてきたばかりで。普段の絵と並べておいておけば、何が違うのかなぁってうっすらとわかる。
サカイ:1年ほど前に、ピンチヒッターで、30人くらいのスケッチツアーに引率で行ったことがあるんです。そしたらね、「これもスケッチだ」と思ったのは、「この前の白馬はどうだった」「いや、この間の乗鞍は天気が良くってー」とかね、あ、これもスケッチだと思った。ただ行って漠然と帰ってきたんじゃなくて、スケッチをして、自慢話もあるのね。そんな自慢話をしながらも、楽しそうなの。その楽しいっていうのは、さっきも言ったような実体験をひとつひとつ続けて行く、継続性があるから。これもひとつのスケッチだなぁと、僕はちょっとびっくりしました。ばかにできない。

野村:トータルな体験だね。

斎藤:その人が多くを語れることは、手を通して話せるということでしょ?海外旅行でもなんでもいいんだけど、写真バシバシ撮ると、ほんと、5分でも2分でもいいから線一本描いてくるだけで、なんとなく思い出せるんだよね。そこに戻れるんだ。

サカイ:会員の方が旅行に行ったときに、最近増えて来たのは、スケッチをして帰ってきて、「先生見て。」それで、いい作品が多い。あれも最初は億劫だしね、道具は多いし、写真撮ればいいだけの話だけど、描いてきて、ちょっと見てって胸を張る。ああいう習慣もいい。ひとつの目的にしてもいいくらいだ。

柴村:俺も。必ず見せろって言って、見せに来させる。不思議なもので、お、いいじゃないと思う。その会員を再発見みたいなのがね、ちょっとあるんだよ。そういう意味でスケッチがサガンに根付いていくのは、とてもいいことだろうと思う。

斎藤:例えば、ここで描くのが静物のスケッチだとするじゃない。家に帰ってもう一枚、同じのを描く、そこでは、もう一度骨組みだとか構成とかを考える。真っ白いキャンバスだから。その次にモチーフを見ると、今までと違った静物に対する素朴な関わりが出てくる。

サカイ:それって、あの、マチスの何十点も同じ絵描いているのと同じ意味かい?

野村:印象で終わってしまうじゃない。例えば、旅行でもそう。駅で電車が入ってくるまでの間に、紙切れがあってばっと描いて、電車に飛び乗った。その待っていた3分の間、手を動かした3分の間って、ただぼんやり駅で待っている3分と違う3分だよね。

サカイ:写真撮っても、見ているところが一点。絵を描くことによって、全部チェックしているんだよね。だから、スケッチしに行くっていう生徒さんが何したらいい?って聞いてきたら、写真はばかすか撮れ、近づいたり、遠くから。もしこれを絵にしたかったら、一枚だけ、スケッチして、と。それがリアリティだし、いろいろなところをちゃんと見てるわけだし、見なきゃ描けないんだから。

柴村:そういうリアリティってあるよね。

野村:そうそう。三本しか線描けなくて、一枚の絵にならなくて
もいいのよね。そこに止まって、ものを見たってことが全然違うのよね。写真10枚よりも。

サカイ:やっぱりスケッチ、もし、タブローってさっきから言っているように、アトリエに戻ってこれを絵にしたいと思ったら、それだけの材料が必要なのよ。要するに、素材集めをしなきゃいけない。素材の中にはスケッチも必要だよと言うね。

柴村:体験入学なんかに来た子に言うのは、うちの会員もみんな自主的にスケッチに行くんだけど、その時は結構描いてくる。スケッチ仲間で旅行に行かないと、なかなかスケッチってできないし、もしくは一人旅しかできないんだって。「時」を過ごすひとつの方法を身につけることでもあるんだからね。歳とって、一人旅した時に、3時間4時間ひとつの行為に時間を過ごすことができる、そういう方法を覚えることでもあるんだから。それは一人では最初はなかなか取得できないから、スケッチ仲間を得ることも、こういう会の意義なんだからってね。

サカイ:ホームページに載っている、柴村クラス有志のスケッチ、あれはいいよ。

野村:風景を描くというよりも、ひとつの家に行ったという、ひとつの日を楽しんでるよ。

斎藤:それが出てるよね。

柴村:あれは全員見せてくれて、ひとつひとつ批評するんだけど、その時わーっと会員も集まってきて、あ、これはイイからって上から額みつけてきて入れたり。

サカイ:おいしいもの食べて、昼寝したりして。

柴村:そんなものを得るのは、会員同士の財産っていうか、とってもいい時間を過ごしていると思う。

野村:でもああいうことって、日常生活の中でも本当はできるのかもしれないね。

1
2
3
4
戻る

絵画教室 アトリエ・サガン 150-0011 東京都渋谷区東3-15-5 AYビル5F TEL/FAX:03-3797-5501
E-mail:info2@a-sagan.com
copyright©2002-2005 Atelier Sagan All rights reserved.