柴村：モチーフ＝モノって考えがちだから、最初にまず、壊したいところがあるよね。

サカイ：風景写真を撮ってきて、それを風景画にしたいっていうのがあるじゃない？描くときに、それを写そうという気持ちになるでしょ。なんでこれを写真に撮ってきたの？なんでそこをスケッチしてきたの？と、ちょっと考えてみなさいよって、ものすごくあるよね。それってモチーフの問題じゃないよね。なんでここを描いてきたかってことを自分にフィードバックして考えることがモチーフなんだよ。

柴村：俺なんか会員が写真をじーと見ていると、ひっぺがしちゃうよ。見えないぐらいのところに置いて描かせるんだ。風景クラスをはじめさせてもらって、面白い現象があってつくづく思ったんだけど、ひとつのポイントは、さっき言ったように、季節のいいときは外に出て、暑いときや寒いときは中で描くんだけど、どうしても写真が必要になるわけで、さっき言ったことなんだけど、自分の絵を見ることで、かえって学ぶかな、というところはある。それまでは、風景は外で気持ちがいいんだよ。描いている自分に、気持ちがいいんだよ。体感しているからね。やっぱりわりといい絵を描くんだよね。ただ、長期間続いて行くと、いろいろと難しい問題がでてくるんだけど。外で描いていたとしてもね、何回も何回も描いていると。室内に入ると今度は、写真を写すんじゃなくて、その時に体験したものがあったというところに、サカイさんがさっき言ったところに話が戻るんだけど。それでちょっとずつ、自分の絵を見て絵を描くということに･･･。写真はその記憶とかそういったもの確認作業の材料でしかない。そこが最初は特に初心者は、とまどうだろうし、それを抜けだす事がある意味苦しいんだよね。

サカイ：ただ写すということは勉強であるかもしれないけれどモチーフとして選んでいくことではないよね。

齋藤：でもね、そこで落とし穴があるんだよ。例えば、スケッチというのは、限られた時間の作業でさ。本当に自分の中で描きたいものを、熟成させる時間が少ないからね。

柴村：そこを教えるのが難しい。やっぱり２、３年かかる。

齋藤：僕は風景を見たりするのが好きなんだけれど、そこの場に帰りたいとか、もう一度戻りたいとか、って思いがないと、描きたくない。さっきのサカイさんのスポットライトの話に関わってくるんだけど、静物も、モチーフ見ているとなかなか主役が出てこない。だけれど、描いて絵を見つめていると、自然とそこに主役が作られてくる。それがフォルムとの関係であり、色との関係であるんだけれど。

サカイ：だから、えてしてきれいなモチーフやきれいな景色は絵にしにくいじゃない。だから、汚いモチーフをどっかにおいて、きれいにみせるというのが作画意識というんじゃない

野村：ちょっとここを直すってときでも、モチーフを全部だして同じように並べる人っているじゃない。極端に言えば絵の後半は、モチーフはいらないと思う。そして、自分の絵を観る時間が大切になる。

齋藤：でも、違うよ。凝視していってさ、顔でもね、そんな顔の表面なんて描くなって言うけどさ、見てて、しわの一本が面白いとおもったら、それを描くと思う。で、いいしわだったら、これはいい絵だってみんな言うと思う。だからそこがマクロに見るか、ミクロに見るか、ってことは大切だと思う。見ちゃいけないってことじゃなくてさ。

サカイ：だから、それはしわに執着すればいいんだよね。しわもいいわ、つやつやしてるは、色もきれいだ、形もしっかりしてるってことになると、それはモチーフに対して悪いよ。やっぱり一点を抽出してあげることがモチーフに対するありかたでしょ。

柴村：だんだん擬人化されてるね。

齋藤：擬人化させるっていうのはね、絵画なんかで再生させてみたいっていう想いがあって･･･

野村：もうひとつモチーフが大事だと思うのは、そこに無限のヒントがあって、そこに帰れるところがあるってことが大事だと思うのね。

サカイ：それは確認作業ってことでしょ。

野村：そうそうそう。それにくっついてくっついてくっついて、それを説明して、それに負けてしまうんではなくて、戻っていくその原点がありますよ、ここに全てがありますよ、っていうためにおいてある。

サカイ：だから、モチーフを説明しはじめると、自分は満足するかもしれないけれど、見る人はうっとうしいじゃない。

野村：自分がわからなくなったときには、モチーフを説明したくなる。

サカイ：だから、自分がそのモチーフを解釈して、モチーフに黙っていなさいよ、とか、もっとアピールしていいよ、とか、そういうことが僕は楽しい。

野村：解釈なんだよね。